インドに旅行中、不可触民の子供と出会う

しかし、
その子供が言う名称は聞いた事がない。その旨を伝えると
「不可触民は僕らの総称だよ。僕のカーストは○○」
だから市場で自由に買い物ができない、と辛そうにする彼。
「買い物ができないのは、解っていたことなのに、つい
イイ市場が見えたから、僕だって楽しみたいと思ってしまったんだ。無理なのにね」
彼に、何と言えばいいのか、私には言葉が見つからない。
と、すぐ近くにてウィンドウ・ショッピングできそうな雑貨屋(?)が目に入る。
用途は解らないけど、品揃えが面白く、
「ねぇ、あの店を一緒に見ようか?」と私が言うと、彼が
どの店?とでもいうように顔を
そちらに向けたので、私は一人先に店に近付き、
「これって何をするためのものかな?」と話を振ろうとしつつも、
あまりに商品が素敵なので、
「ここ、素敵な店ねぇ!」と一人盛り上がりまくる。
子供のように盛り上がる私を見た彼は、戸惑うように
「お姉ちゃんて、子供のようだね」な意味の事を口にし、
「僕、家に帰るよ。気を使ってくれて有難う」と彼は去って行った。
すると、近くから男性が出てきて
「あんた日本人だろ?これを、前にここに来た日本人が
『日本人が来たら見せろ』って置いていったんだよ」と
日本語が書かれた手紙を差し出してきた。
その文面を見て、ハッとした。
手紙にはーー
「あなたは、ここで出会った少年に会うまでは
インド人の英語を、全て聞き取ることは無かったでしょう。
それが、少年の話す英語は、全て聞き取れた。
おかしいと思いませんか。
それまで、話の何分の一しか理解できなかったあなたが
彼の話す言葉なら、『全て』聞き取れたなんて」
・・・
そうだ、私は確かに英語が得意ではない。
「全て」聞き取れるなんて、おかしい。
少年は、日本人だけに狙いを定めた、日本人向けの英語で話していのだ。
この手紙を持ってきた人が
「あんたが、金目のものを見せることもなく、
えらく無邪気に少年に接したから、彼は
そのまま去ったんだろうね」という意味のことを言っていて、
そうか・・・と思っているところで目が覚めた。