盗まれたリアル:90年代演劇は語る 長谷部浩 1998.9 出版者:アスキー  発売:アスペクト ISBN:4757202008

一つのモノに幾つもの意味を持たせなければというのもあったけど、今は
もう書いたっていうか、書いたし見せたからイイ、という発言に続き
野田秀樹氏は――

生の言葉を使うことを覚えたのかな。
「神様は信じるけど、神様の言葉が信じられない。
@どうして?@神様は見えるけど、言葉は見えないもの」。
そういうセリフを書いたときに「あぁ、お客はひっかかったな」と
思った(笑)。「ほら、きたきた」って。そういう言葉に
やっぱり引っ掛かるんですよ。俺が若いときは気持ち悪いと
思っていた「元気出せよ」とかいう言葉が、そのまま詞になった。
若い人たちは言葉に無防備で、素直に全部きく。
ビジュアルに強くなったぶん、言葉に対しての
きまり感が特になくなっているよね。

とても頷いてしまいます。
34歳で右目が見えなくなった話では――

中心網膜動脈血栓っていってね、目の網膜に中心動脈が通っている。
これが脳につながっていて視覚が生きている、その血管に
血栓が起きちゃった。詰まった時に医者はどういう措置を取るかっていうと、
体内の酸素を減らせば、詰まっているものをプッシュして、
とにかく早く血が流れようとする医療器具を使うんだ。土曜だったから、
インターンというか留学生みたいな医者だったんだよ。
「30分以内になんとかしないとタメヨ」って。なのに看護婦は
ゆっくり降りてくるしさ。「器具ないよ」って言ったから、結局30分間
俺コンビニの袋を口にあてて「吸うはあ」ってやっててさ、絵柄としては
サイテーだよ。

そんなことってアリか・・・(驚愕)。