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素肌のおんなたち:日本を 騒がせた三十六人の女意外史 藤本義一  1982.1 都市と生活社

侍従の君は、今昔物語で男を翻弄した人で、
芥川「好色」谷崎「少将滋幹の母」のモデル。
淀君
鼻持ちならないように描かれてきたのは
何故か?という推察など。
●おすみちゃん、おたかちゃん
父の仇討ちをした姉妹。
仇討ちは、どうやって許可申請をとるか、
これで初めて知った。
しかも、仇討ち現場を見学してもOKだなんて。
中山みき
パトリシア・ハーストが過激派と接触
銀行強盗に走ったことと少し比較。
松尾多勢子
勤王派のスパイ説もある。
討幕運動に関わり、明治維新までに
全財産をはたいて
(夫に断りを入れたらしいが、財産は
自分名義だったんだろうか)若き志士を
救ったという。
●累さん
芝居である「東京累ヶ淵」に出てくる。
17世紀に実在した女性をモデルに書かれたが、
女の怨念と怕さだけが表面に出されている
けれど...という前フリのあと、紐解く。

名主の家に嫁いできた「すぎ」には、
助という連れ子がいた。すぎは美人だった
が、娘は不細工で、
夫が「お前の連れ子は醜い」と言うので、
結婚後に殺してしまう。
近所の人は、助ちゃんが居ないのは、
実家に預けてきたんだろう、と
追求しなかった。
そのうち、すぎは累を生む。
累は、助にそっくりだった。
周りの人に
「まるで、かさねて生まれてきたよう
だ」と言われ、累は「カサネ」と呼ばれる
ようになる。
夫婦はノイローゼで死んでしまい、
カサネは自分に似ているという助が、どうも
殺されていたらしい、と知って引きこもりになる。
婚期を逃して日々を送っていると、ある日
行き倒れの男を救う。
やっと掴んだ男、とカサネは男に全財産を
つぎ込んで結婚するが、カサネが
鬱陶しくなった男は、カサネを鬼怒川の
淵に落として殺したのだった。

・・・
怖い話じゃなくて、哀しい話じゃないか。