人工内耳

手足がついてる身からすれば
「義足なんて慣れればいい
でしょう?」だし、もともと
聞こえてる人からすれば
人工内耳のリハビリも「
聞こえてりゃ慣れるでしょ」
なんだけども、赤ん坊からの
やり直しを成人してから
やってるようなもんだもの。
もともと無いんだから。 https://mobile.twitter.com/kurage313book/status/1092720560235134976

人工内耳ね、つけた直後は
音が全部アルミホイルを
クシャクシャにするときの
耳障りな音しか聞こえないん
ですよ。ある程度は覚悟していたし
そんなに簡単でもないとわかって
ましたけど、それでも最初は
ショックでした。これ、脳に
音を認識する回路ができて
ないからなんですけど。 https://mobile.twitter.com/kurage313book/status/1092722160722837504

っか、物理的に痛みを感じるん
ですよね、まじで。リハビリ
してる間、ひどいときは
脳の中をアルミのたわしで
こすられるような感覚に
襲われました。あれは
もう経験したくないっすね。https://mobile.twitter.com/kurage313book/status/1092723289229713410

それか数カ月すると人の声か
「未調教の初音ミクを更に
高くしたような声」になって
きました。おっさんもばーさんも
初音ミクの出来損ないみたいな声。
もう火の鳥のロビタ編を
リアルでやってるようなもんでして。https://mobile.twitter.com/kurage313book/status/1092726029934682112

どこを向いて何を聞いても
「出来損ないのボーカロイド
声に囲まれる世界」って
なかなか愉快なもんですよ?
ちなみに今でも初音ミク
いわゆる「萌え声」は怖いです。
キンキン高すぎて脳に突き刺さる!
逆に野太いおっさん声に惚れますね。 https://mobile.twitter.com/kurage313book/status/1092727760865247233

それから数カ月でやっと音の
輪郭が固まってきて、補聴器
つけるより理解度が急速に
高まった時期がありました。
成長曲線ってやつですね。で、
二年くらいするとだいたい
会話に困らなくなりました。
もともと補聴器で会話して
ましたけど比較ならないほど
理解度が高まりました。https://mobile.twitter.com/kurage313book/status/1092728827413811201

で、人工内耳をつけてよかった
なー となったんですが、人工
内耳をつけて5年くらい経った
夏に今の妻とお寺に行ったんです。
そしたらなんか鳴ってるなーと
思って妻に「なんだろうねこれ?」
と聞いたら「セミだよ」と。
その瞬間、頭の中で
セミがはじけたんですね。 https://mobile.twitter.com/kurage313book/status/1092729763506970625

たとえるなら英語がいきなり
「言葉」として聞こえるような
もんなんでしょうけど、
「雑音」が一瞬にして「蝉の声」
に変わったんですよ。「ああ、
これが蝉の声なのか」と涙が出た
のを覚えています。これが
私の中で「音」が
質的に変わった瞬間です。https://mobile.twitter.com/kurage313book/status/1092730623863619585

質的な変化とはこれまで
「聞く」というのはほとんど
「会話で情報をやり取りする
ための方法」でした。まぁ、
音楽とかも聴いてはいた
んですが、「リズム」をとるのが
楽しいかったからで
「音色」まではわかりません
でした。それが一気に
「音の叙情」というものを
意識できるようになりました。 https://mobile.twitter.com/kurage313book/status/1092731271644467200

それ以来ですね、何か気になる
音がしたら妻に「これ、何の音?」
と聞くようになったんです。
蝉の時ほど鮮明に覚えている
瞬間はないのですが、それでも
鈴虫の澄んだ声やカエルの合唱を
理解できた時には感動しました。
まぁ、1年にひとつくらいですけど。
https://mobile.twitter.com/kurage313book/status/1092731854866722816